統計学コースの紹介

案内文
修了生の進路
大学院生の研究環境


案内文

東京大学経済学研究科の中に独自な研究・教育の組織として「統計学コース」があることをご存じない学生、院生、社会人の方々も少なくないと思います。欧米の主要な大学院と違って 独立の統計学科を持たない東京大学では、大学院において「統計学とその応用」を主な研究分野にしている教官・院生が集まる一つの充実した組織として「統計学コース」が経済学研究科経済理論専攻(現:経済専攻)の中にあります。今日では経済、金融(ファイナンス)、経営などに関係する諸分野に限っただけでも、計量経済学、経済統計学、マクロ経済学、労働経済学、産業組織論、ファイナンス(金融)、マーケティング、などを挙げてみただけで各分野では統計的方法が必要不可欠な分析手段として応用されていることに気づかされます。他方、実務界でも伝統的な中央政府に必要な官庁統計や企業における品質管理論などに加えて近年では特にファイナンスやマーケティングなど金融業・保険業の日常業務の中でもリスクに関する統計学の専門的知識が必須とされるようになってきています。

  経済学研究科経済理論専攻内の「統計学コース」のよき伝統は一言で云って「基礎的な統計学の理論」を大事にすることですが、同時に様々な応用的な問題にも関心を向けるように関係教官は心がけています。カリキュラムでは統計学の専門家として最低限不可欠なトレーニングを習得する場として、修士1年目に確率論と数理統計学が必修となっています。この他、計量経済、経済統計、経営統計といった伝統的科目に加えて、計算機統計、時系列解析、多変量解析、確率過程、ベイズ統計、などをはじめとする統計分野の講義や演習が関係するスタッフの守備範囲という制約はありますが可能な限りの内容が用意されています。「統計コース」に所属する院生は経済学研究科内で提供されている経済・経営関係の話題にも関心を持つことが薦められています。むろんですが、統計学・統計科学の 関連分野としては数学、生命科学、環境科学、品質管理、情報・計算機科学、などなど多岐におよんでいるので、入試時点において特に狭い意味での経済学やその応用を意識する必要は必ずしもありません。

  さらに統計学の重要な一つの特質としてその学際性がありますが、統計学コースでは伝統的な文科と理科という区別にとらわれることなく、学内の幾つかの大学院部局の関係教官が協力してこの統計学コースで講義を提供するとともに、統計学に関わる国内・国外からのゲストを含めたセミナー・シリーズとして長い伝統がある「統計学輪講 応用統計ワークショップ」が毎年、定期的に開催されています。

  大学院生の出身学部を見ても経済学部ばかりでなく教養学科・理学部・工学部などからの進学者もいて、教官ばかりでなく院生を含めて文字どおり学際的様相を呈しています(2008年度までは小論文の提出を課していましたが、2009年度入試から「統計学コース」では論文提出は任意となり、従来よりも受験が容易になりました)。統計学コースでは伝統的には大学等の研究者を目指す院生が多かったのですが、最近では実務界での要請に応える形で中央政府・銀行、保険会社をはじめとする金融機関・民間シンクタンク等に就職する院生も増えてきています。

(旧ウェブページより、2009年3月2日)




修了生の進路
修士課程修了者の進路
「案内文」にあるように、金融・保険の分野に就職する方が多いですが、近年では就職先でデータサイエンティストの業務を行う方も見られます。博士課程への進学者数は年によって大きく変動しています。2010年代はじめには博士課程への進学者無しの年もありましたが、ここ数年では毎年、博士課程への進学者が出ています。

(主な就職先)
金融庁、日本銀行、東京都庁、損害保険料率算出機構、アクサ生命保険、日本生命、第一生命、中央三井アセット信託銀行、電通、東京海上日動、
日本総合研究所、野村総合研究所、三井住友海上あいおい生命、三井住友海上火災保険、三井住友トラスト・グループ、三菱総合研究所、
三菱UFJ信託銀行、明治安田生命、楽天、UBS証券、サイバーエージェント 等

博士課程修了者の進路
博士課程に進学した方の進路は、進学者の個性を反映して非常に多様です。直近の十数年で、在籍者の半数以上が三年で博士号を取得しています。三年以上かけて博士号を目指す方もいる一方、短縮して二年で博士号を取得する方もいます。また博士号を取得せずに(単位取得退学)在学中に就職先を見つけるのも一つの手です。近年では博士課程での研究をもとに、証券会社やコンサルティング会社で統計分析を活かした業務を行っている方がいます。また稀な例として、在学中に研究の職を得て退学した後、数年を経ず博士論文を提出して博士号を取得した方(論文博士)もいました。

(主な就職先)
大阪大学、金沢大学、関西学院大学、九州大学、成城大学、千葉大学、筑波大学、東京大学、東京国際大学、東京都立大学、一橋大学、名古屋大学、
広島大学、福島大学、東京工業大学、横浜国立大学、琉球大学、東北大学、京都大学、カリフォルニア大学(サンタバーバラ)、統計数理研究所、
ニッセイアセットマネジメント、野村証券 等

留学について
在学中に海外の大学の博士課程(統計学部、経済学部、ビジネススクール等)に出願し、そこで博士号を取得する方もいます。修士二年の冬に応募する方もいれば、博士課程に進学した後に応募を始める方もいます。また東大で博士を目指す方も国際学会への参加、共同研究者の所属機関への訪問、海外学振による短期滞在を通じて国際的に研究活動を行っています。

(過去の大学院生の留学先)
イリノイ大学、ウィスシコンシン大学(マディソン)、カリフォルニア大学(サンディエゴ)、コーネル大学、シンガポール国立大学、スタンフォード大学、
デューク大学、ノースウェスタン大学、マサチューセッツ工科大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、ラトガース大学 等



大学院生の研究環境
院生研究室
国際学術棟に院生研究室があり、2023年現在、ふたつの部屋が統計学コースの修士・博士課程の学生に割り当てられています。コアタイム制のような研究室での滞在義務はありません(自宅や図書館で勉強や研究をする方もいます)。研究室にはプリンターやホワイトボードなどの設備があります。また、(図書館管理のものではない)統計学コースで共用の図書もあります。 院生研究室は、かつては赤門研究棟にあったものが、2017年に現在の国際学術棟に移転となり、新しく広い部屋になりました。

計算環境
経済学部の大学院生用の計算サーバがあります。統計学コースでは複雑なモデルの推定やシミュレーション実験で長時間の計算が必要な場合に利用されることが多いです。また、MATLABやSTATAなどの統計計算ソフトウェアが利用可能です。全学および経済学部で購入しているデータもあります。詳しくは経済学部の計算機室のページをご覧ください。

経済学図書館
過去から現在までの統計学・計量経済学・関連分野の書籍を多くそろえています。特に洋書のハンドブックやモノグラフを網羅的に購入していますので、関心はあるけれど高価で手が出ない書籍を調べるのに重宝します。在学者は実際に集密書庫に立ち入って書籍を探すことが可能です。学生からの新規購入書籍のリクエストも受け付けています。詳しくは経済学図書館のページをご覧ください。 統計学・計量経済学の雑誌も、主だったものは(全学または経済学部で)ほぼ購入しており、学内ネットワークからは直接、学外からは認証GW経由で閲覧・ダウンロードできます。

TAとRA
ティーチングアシスタント(TA)のアルバイトが毎年募集されます。統計学コースの学生がTAをしている科目のほとんどは、同じく統計学コースの教員が担当する科目であることがほとんどです。大学院科目では主にコースワークでTAが募集され、TAセッションという講義を担当することもあります。学部科目では「統計I,II」「数理統計I」「計量経済学I」「数学I」などでTAが募集されます。
リサーチアシスタント(RA)を募集する教員もいます。業務の内容は実際に研究をするものから、事務作業の補佐にいたるまで様々です。

セミナー
「案内文」で触れられているように、学内外の研究者による研究発表が毎週開催されています。具体的には、大学院生を含む学内の統計関連分野の教員が一同に会する「統計学輪講」と、主に学外(海外を含む)の研究者を招待して行う「応用統計ワークショップ」が該当します。学生にとっては、研究の視野を広げる良い機会であるとともに、特に修士の学生にとっては研究テーマを見つけるヒントにもなり得ます。なお、「統計学輪講」では大学院生も研究発表を行う必要があります。詳しくは「課程の概要」のページを参照してください。

英語について
大学院では一部の講義・セミナーは英語で行われます。また英語で論文を執筆したり、研究発表を行ったりする必要があります。東大全学で英語学習プログラムを提供していることがありますので、積極的に利用してください。



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